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少子化・過疎化により急速に進んでいる学校統合
近年の日本では、少子化や過疎地域の人口減少などの影響から、下図のように公立小中学校の児童生徒数および学校数は毎年減少をたどっています。

2024年度の公立小中学校の学校数は、1989年度と比較して21.7%(7,647校)減少、10年前の2014年度と比較して9.0%(2,728校)減少と、かなりのペースで減っていっています。こうした状況化で取られるのが、複数の小規模校を合併し、より広範囲を校区に持つあらたな学校を誕生させる学校統合です。また、近年では、学力向上と教育の質の確保という観点でも義務教育学校(小中一貫校)への学校統合が行われています。実際に、そのような背景から、2022年から2023年には全国で293件の学校統合が実施されました。

統合事例件数
令和4、5年度の2年間で293件(718校→301校)
【統合の基本的な形態】
●小学校同士の統合 167件
●中学校同士の統合 66件
●小学校と中学校を統合して義務教育学校を設置 49件
実は世間で想像されているよりもずっと早いペースで、小学校の閉校・統廃合が進んでいるのです。
学校統合で生じる「子どもの通学危機」

こうした学校統合には、「学校運営の効率化」や「学びの機会の増加」といったメリットも挙げられますが、デメリットも無視できません。
統廃合が行われることにより、校区が広範囲にわたり、通学距離が長くなってしまうという「子どもの通学危機」はその最たるものでしょう。
遠距離通学が及ぼす影響
子どもの健康と学業への影響
通学に時間がかかることから、必然的に子どもたちが家を出る時間も早くなります。
- 朝早く起きる必要があり、日中に眠くなってしまう
- 給食の時間までにお腹がすいてしまい、学業に集中できない
- 重い荷物を持っての長距離の登下校で心身に負担がかかる
といった懸念が挙げられます。
家庭によっては通学の送迎が必要となるケースも発生し、保護者への負担増加も考えられます。
安全上の懸念
通学中の事故や犯罪の発生など、子どもたちの安全確保については以前からたびたび話題になっていました。
特に、冬場に帰宅が遅くなると下校中に日が暮れてしまうことも考えられ、防犯対策・事故防止対策にはより慎重になる必要があります。
保護者の不安
遠距離通学となることで、保護者が抱える不安は想像以上に大きなものとなります。
通学にかかる物理的な時間が長くなるだけでなく、通学路の環境によってはさらに心配が増すこともあります。たとえば、
- 勾配が激しく、急な下り坂がある
- 歩道が狭く、車のスピードが出やすい
- 路整備が不十分である
- 人通りが少ない
といった環境・状況である場合、怪我や犯罪に巻き込まれる危険性も高まります。
そのため保護者は、毎日「無事に学校に着いただろうか」「安全に帰宅できているだろうか」といった不安を抱えながら子どもを見守ることになるのです。
学校統合に伴い増加する”スクールバス”の導入
こうした学校統合に伴う通学課題への対応策として、多くのケースで実施されているのがスクールバスの導入です。
実際に、文部科学省の調査によると、令和4〜5年度に行われた学校統合(293件)によって、統合後にスクールバスでの通学が統合前の約2倍となった事例が確認されています。

文部科学省の「国内におけるスクールバスの活用状況等調査報告」によると、2008年3月時点で全国の62.7%にあたる1,132自治体でスクールバスが利用されていたことから、日本国内では元々スクールバスのニーズが高かく普及も進んでいたことがわかります。近年では、バス運転手の不足や、スクールバス運行にあたってのコスト負担等の課題もフォーカスされておりますが、依然としてニーズと必要性は高いと考えてよいでしょう。
参考:国内におけるスクールバス活用状況等調査報告書
スクールバス導入にも課題が
スクールバスによって、通学距離や安全確保といった課題の解消が見込めますが、管理コストや導入ハードルという新たな問題も浮上します。
特に注意したいのが、スクールバスの導入による教員の負担増加です。
- 終業から下校バスが来るまでの待ち時間、児童生徒の見守りが必要
- 置き去り防止、安全管理のため、バスの乗車名簿の作成や乗車管理が求められる
- バス会社との連携に加え、保護者への連絡業務が増える
こうしたスクールバス導入にかかる負担に対して、既に運行を開始している学校ではどのように対応しているのでしょうか。
実際に、小学校の統廃合をきっかけにスクールバスを導入した、千葉県東庄町の東庄小学校の事例を紹介します。
スクールバスの運用事例 - 千葉県東庄町 東庄小学校
東庄小学校は、2020年に近隣5校を統廃合して設立された公立小学校です。
児童472名の校区をカバーするため、9コース31箇所の停留所を有するスクールバスを運行しています。
児童の安全確保を目的とした乗車管理
東庄小学校(東庄町役場)では、観光バス会社の協力のもとスクールバスを運用しています。
また、スクールバス運行を行う上で、児童の安全確保は欠かせないため、学校とバス会社で協力し乗車管理を行っています。
元々、東庄小学校では児童の置き去り防止等の観点から、"バスカード"をもとに乗車管理を行っていました。
具体的には、遅刻や欠席、学童利用等でバスに乗車しない児童もいるため、毎日バスカードに【登校・下校のバス乗車有無】を保護者に記入してもらい、当該情報を反映した乗車名簿をもとに乗車確認を行っていたのです。

ただし、そのような運用方法には課題もありました。
スクールバス運行管理の課題
- バスカードの提出漏れがある家庭への確認が必要(担任が対応)
- 乗車名簿は目視でチェックしており、不備があると児童が置き去りになる可能性がある
- バスカードの集計等、日々の管理作業に毎日4時間程度を要する
教職員の対応に加えて、バス専任担当としてパートタイマーの学校支援員1名を雇用している状況でした。
ICTシステムの導入によりバス名簿の業務負担を軽減
こうした課題に対応するため、東庄小学校では学校向けICTシステムChimelee(チャイムリー)を導入。
保護者がアプリから欠席等連絡とバスの不要連絡を送信できるようにし、乗車管理をシステムで行えるように整備しました。
これにより、バス名簿の作成にかかる作業時間を4時間から1時間に短縮するとともに、児童の安全管理をより確実なものにしました。

まとめ:子どもたちの学びを守るために、地域と学校ができること
少子化と過疎化の進行により、学校統合は今や多くの地域で必要な施策となっています。それに伴って生じる「遠距離通学」という課題は、単なる距離や移動手段の問題にとどまらず、子どもたちの健康・学業・安全、さらには保護者や教職員の負担にも直結する、非常に多面的な課題です。
スクールバスの導入は、そうした状況における重要な解決策の一つですが、それ自体にも運用面での工夫や支援が求められます。必要なのは、制度・設備だけでなく、地域・保護者・学校が一体となって子どもたちの通学環境を見守り、支えていく体制づくりです。
今後さらに進むであろう学校統合の中で、「子どもたちが安全に、安心して、そして元気に学校へ通える」仕組みをいかに整えるか。それが、これからの地域教育の質を左右する重要な鍵となっていくでしょう。
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