【開催レポート/全文版】『知って得する!学童保育の補助金の話 その壱』〜国の補助金満額もらうと1,200万超えるってホント!?〜
レポート
学童保育の運営に役立つ補助金には、実はさまざまな種類が存在します。
「申請が難しそう」「うちの学童は対象外だと思っていた」
そんな理由で、本来受け取れるはずの補助金を逃していませんか?
国の制度を正しく理解し、職員配置や運営体制を少し工夫するだけで、公設・民間を問わず、年間1,200万円の補助額になるケースもあります。
本セミナーでは、愛知学童保育連絡協議会 役員などを務める業界の第一人者、賀屋 哲男氏をお招きし、学童保育で活用できる補助金について丁寧に解説いただきました。
この記事のポイント
- 学童保育の補助金は自治体の予算と条例によって変動あり
- 補助金の基準額は職員配置・開所日数・児童数で大きく変わる
- 加算のフル活用で「補助金年間1,200万円超」も可能!
目次
セミナー概要
近年の学童保育では、待機児童の増加に伴い、職員の負担や人手不足は限界を迎えています。
「職員の負担軽減」と「保育の質向上」を目指すには、補助金を上手に活用して十分な運営資金を確保することが何より大切です。
本セミナーでは、以下の内容について分かりやすく解説します。
- 学童保育に関わる国の補助金の全体像
- 自治体ごとの運用の違い
- 職員配置や開所日数による加算の考え方
- 運営の工夫による補助額の変化
- 補助金を活用したICTシステム導入
登壇者紹介
賀屋 哲男/Tetsuo Kaya
1959年生まれ 山口県山口市出身
愛知学童保育連絡協議会 役員
名古屋市学童保育連絡協議会 事務局次長
全国学童保育連絡協議会 副会長
愛知学童保育連絡協議会で専従職員として活動し、学童保育の制度充実や施策提言、指導員向け研修や研究集会の企画運営、情報発信を通じて現場を支援。子どもの安全と健やかな成長を保障する学童保育の発展に継続的に貢献している。
齊藤 弘志/Hiroshi Saito
1983年生まれ 愛知県名古屋市出身
2017年VISH株式会社に入社後、幼稚園・保育園向けに「園支援システム+バスキャッチ」の営業・導入を担当。その後2025年11月より、学童保育向けクラウドサービス「Hokally」のプロダクトリーダーに就任。
現在では、家庭と指導員の負担軽減を目的に学童施設へシステム提供を行っている。
学童保育の補助金制度はどこから予算が出ている?
賀屋様:学童保育の運営において、補助金は欠かせない資金源です。
国の制度を理解する前に、まずは「誰がそのお金を出しているのか」という財源の仕組みを押さえておきましょう。
基本的には、国・都道府県・市町村がそれぞれ3分の1ずつ費用を負担する形で補助金は構成されています。ここで重要なのは、学童保育の補助金制度が「市町村事業」と位置づけられている点です。
国が制度を作っても、決定権は「自治体」にある
賀屋様:現場でよくある悩みとして、「国のニュースでは新しい補助金が出ると聞いたのに、自分たちの地域では対象外と言われた」というケースがあります。
なぜ、このようなズレが生じるのでしょうか。
それは、「市町村が予算化しなければ、国の補助金は執行されない」という大原則があるからです。
(図:自治体ごとの補助金利用可否の仕組み / 賀屋氏資料より)
賀屋様:例えば、国が全体で900万円の補助金を用意したとします。本来であれば、3分の1という補助比率に則って国・県・市町村が300万円ずつ出し合って900万円となります。
しかし、もし市町村が「うちは200万円しか予算を出せない」と判断した場合、国と都道府県の予算もそれに合わせて200万円までしか出せません。つまり、現場に届く補助金は合計600万円に減額されてしまうのです。
学童保育を運営する皆さまが補助金活用を検討する際は、自治体の要項(条例や予算)を必ず確認することがスタートラインと言えます。
補助金の基準額は、職員・開所日数・児童数の3要素で決定される
賀屋様:補助金計算の土台となるのが「基準額」です。基準額は一律ではなく、以下の3つの要素によって決定されます。
1. 職員配置(常勤職員や有資格者を何名配置しているか)
2. 開所日数(年間250日以上の開所要件を満たしているか)
3. 利用児童数(支援の単位となる子どもの規模は適切か)
現場では「うちは規模が小さいから」「自治体の予算が決まっているから」と諦めてしまうケースも少なくありません。
しかし、これら3つの要素を運営努力によって最適化すれば、ベースとなる基準額そのものを数百万単位で引き上げることが可能なのです。
常勤の職員配置で補助金基準額に約180万円も差が生じる!
賀屋様:学童保育における補助金の基準額を計算するうえで、最も金額へのインパクトが大きいのが「職員配置」です。
国の基準では常勤職員を2名以上配置することが望ましいとしており、常勤職員2名以上と2名未満を比較すると、補助金の基準額には年間約180万円もの差が生じます。
「常勤」=「フルタイム」とは限らない
賀屋様:現場が頭を抱えるのが、「小規模な施設で常勤職員を2名も雇う余裕はない」という点かもしれません。
しかし、国の定義する「常勤」とは、必ずしも週40時間のフルタイム勤務だけを指すわけではないのです。
実は、開所時間の8割以上勤務していれば常勤職員として認められるルールが存在します。
例:平日5時間・土曜11時間で週合計30時間開所している施設の場合
開所時間の8割にあたる「週24時間以上」の勤務契約を結ぶことで、制度上の常勤要件を満たします。
短時間勤務の職員であっても、雇用契約の内容を調整することで「常勤2名」の枠組みを作り出し、高い基準額区分を適用できる可能性があるのです。
自治体の条例確認が必須
賀屋様:国が「有資格者1名でも補助金を出す」としていても、自治体が条例で「常勤2名配置が必須」と定めている場合、自治体の条件を満たさなければ補助金が支給されないケースがあります。
逆に、自治体の予算の都合上、どれだけ手厚く配置しても上位の区分が適用されない場合も考えられます。まずは所在する自治体がどのような条例・要項を定めているか、確認することをおすすめします。
学童保育では児童数「36~45人」が支援単位の適正規模
賀屋様:職員配置に続いて基準額を左右するのが「利用児童数」です。
ここで注意したいのは、児童数が増えれば単純に補助金が増え続けるわけではなく、国の定める「支援の単位」という枠組みに合わせて金額が設定されている点です。
国の制度において、最も効率よく補助金が算定される推奨規模は「36人〜45人」の区分といえます。
この区分は「1つの支援の単位」として満額の基準額(常勤2名配置で約693万円)が設定されています。一方で、この人数を下回る場合(1〜19人、20〜35人)は、人数に応じて基準額から減額計算を行います。
補助金の境界線「46人の壁」に注意する
賀屋様:現場の運営において悩みどころとなるのが、児童数が「46人以上」になるケースではないでしょうか。
一単位に46人を超えると児童一人当たりの単価が減額されるなどの調整が入ります。
つまり、無理に定員を増やして46人以上の大規模施設にするよりも、下記の通り1単位の人数を調整した方が、運営資金の確保という面では有利に働きます。
- 「36〜45人」の適正規模を維持する
- あるいはクラス分割を行って2つの支援単位(例:20人と26人など)
登録人数ではなく学童の「平均利用人数」で算出
賀屋様:また、ここの「児童数」の数え方にもポイントがあります。単純な【在籍児童数】ではなく【平均利用人数】を用いて補助金基準額の算出を行います。
例
- 週3日しか利用しない子どもが:「0.6人」としてで計算し、最終的に合計した数値の小数第一位を切り上げて児童数を確定
- 夏休みのみ利用する児童:利用する期間だけ人数に換算して加えることが可能
このように、日々の利用実績を正確に把握し、制度上の計算式に当てはめて適正な規模を見極めることが、健全な施設運営の鍵を握るといえるでしょう。
開所日数250日以上と18時半以降の開所が補助金加算の大きな分岐点
賀屋様:ここまで紹介した国の定めた基準額を100%受け取るには、年間250日以上の開所が必須になります。
もし、開所日が250日を下回る場合は特例扱いとなり、そもそもの基準額自体が大幅に減額適用されてしまいます。
平日のみの運営では「250日」に届かない
賀屋様:現場でよくある悩みとして、「カレンダー通りに運営しているのに250日に届かない」という点です。
実は、平日のみを開所日とした場合、年間の日数は約200日程度にしかなりません。
これでは前述の特例が適用され、補助金減額の対象となってしまいます。
ここでのポイントは、「土曜日」や「学校休業日」をいかに開所日に組み込むかです。
例:毎週土曜日を開所した場合
毎週土曜日も学童保育を開けるとなると、年間日数は約290日程度に伸び、余裕を持って250日のラインをクリアできます。
さらに、250日を超えた分については「開所日数加算」として、1日あたり28,000円(8時間以上開所の場合)が上乗せされるため、運営資金を大きく増やすチャンスといえます。
ただし、日曜日や祝日を開所日数としてカウントするかどうかは自治体によって判断が異なります。(例えば名古屋市ではカウントされません)
まずは自施設の地域のルールを確認してみてください。
「18時半」と「8時間」の壁を超える
賀屋様:学童保育における補助金の性質上、開所日数だけでなく、開所時間も補助金加算の重要なポイントです。
特に意識すべきは以下の2つのラインではないでしょうか。
平日:18時半を超えて開所する
- 長時間開所加算:年額720,000円
いわゆる「小1の壁」対策として、夕方の預かり時間を延長することで「長時間開所加算」がつきます。
長期休暇中:1日8時間を超えて開所する
- 長時間開所加算(長期休暇等分):年額324,000円
夏休みなどに朝8時から19時まで(11時間)開所した場合、8時間を超えた3時間分に対して加算がつきます。
なお、ここで注意が必要なのは、「時間の計算方法」も自治体によって異なる点です。
「1分でも超えれば1時間分とみなす」のか、「30分未満は切り捨て」なのかによって、申請できる金額が変わってきます。「せっかく延長したのに加算がつかなかった」という事態を避けるためにも、詳細な要項チェックをお勧めします。
処遇改善・障害児受入・ICT化など、加算項目を活用しよう
賀屋様:ここまでは補助金の土台となる「基準額」について解説してきました。
しかし、学童保育の運営資金を確保するためには、基準額に上乗せされる「加算項目(補助事業)」をいかに網羅的に活用するかが重要です。
ここでは、特に金額面でインパクトが大きく、かつ現場の課題解決に直結する3つの主要な事業について解説します。
① 処遇改善等事業:活用率は意外に低い?
賀屋様:学童保育で働く職員の給与を改善するための「処遇改善等事業」。
実は全国の学童保育施設での活用率は3割〜6割程度にとどまるのです。
「手続きが難しそう」「うちは対象外ではないか」と申請を躊躇している施設も多いのではないでしょうか。しかし、この事業は職員の定着率向上に直結する重要な施策です。具体的には以下の2種類を押さえておきましょう。
放課後児童支援員等処遇改善事業
2012年度(平成24年度)当時の給与水準と比較して、賃金を上げた分を補助します。常勤換算で月額9,000円相当が補助されます。
キャリアアップ処遇改善事業
経験年数や研修受講歴に応じて、月額1万円〜3万円程度の賃金改善を行うための費用を補助します。1支援単位あたり上限919,000円が定められています。
これらを活用することで、運営費からの持ち出しを抑えつつ、職員に長く働いてもらう環境を整えることができます。
② 障害児受入強化推進事業:専門的な知識への評価
賀屋様:学童保育で障害のある子どもを受け入れる場合、職員の配置数を増やす必要があるため、その人件費を補助する加算が用意されています。
ここでのポイントは、「専門的知識等を有する者」を配置することで加算が得られる点です。
「専門的知識」と聞くとハードルが高く感じるかもしれませんが、自治体によっては、一定の経験年数や研修受講者も対象となる場合があります。
児童3人以上の受け入れで年間200万円以上の加算となるケースもあるため、まずは自施設の受け入れ状況と自治体の要件を照らし合わせてみてください。
③ ICT化推進事業:補正予算のタイミングを逃さない
賀屋様:近年注目されているのが、業務効率化のための「ICT化推進事業」です。
この補助金を使ってICT化を推進するにあたり、1支援単位あたり上限50万円が支給されます。
入退室管理システムや保護者連絡アプリなどの導入費用だけでなく、システムを利用するためのPC、タブレット、プロジェクター等の購入費も対象となる点が大きな魅力です。
「ICT化推進事業」補正予算で措置されるケースが多い
このICT化推進事業は当初予算ではなく、年度途中の「補正予算」で措置されるケースが多く見られます。
また、一度使ったら翌年は使えないという事例も少なくありません。
「いつか導入しよう」と考えているうちに募集期間が終わってしまうことのないよう、国の補正予算や自治体の公募情報をこまめにチェックし、タイミングを逃さずに申請しましょう。
運営体制の工夫により、1支援単位あたりの補助額は年間1,200万円を超える可能性がある
賀屋様:「1つの支援単位でもらえる補助金が1,000万円を超えるなんて本当なのか?」と、疑問に思う運営者の方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、国の制度をフル活用すると、運営体制の工夫次第で年間1,200万円、場合によっては1,400万円近くの補助金を受給できる計算になります。
ここでは、具体的なシミュレーションを通じて、運営判断がどれほど大きな金額差を生むのかを解説します。
「最小構成」と「充実構成」で見る370万円の差
まずは、職員配置(有資格者2名)と児童数(30名)を同じ条件にした上で、「開所日数」と「時間」だけを変えた2つのパターンを比較してみましょう。
パターン1は開所日数が250日未満のため特例が適用されて減額となり、受け取れる補助金額目安は約552万円となります。
一方、パターン2では満額の基準額に合わせて「開所日数加算」がつきます。受け取れる補助金額目安は約930万円。
ご覧の通り、土曜日や長期休暇の対応を充実させるだけで、年間約370万円もの差が生まれます。
「250日の壁」を超え、加算に対応していくことがいかに重要か、おわかりいただけるのではないでしょうか。
加算をフル活用すれば1,400万円規模に
さらに、上記パターン2へ前章で触れた「処遇改善等事業」を組み合わせると、補助額はさらに跳ね上がります。
例えば、以下のような運営体制を整えた場合を想定します。
1. 基準額満額: 常勤2名配置、36〜45人規模(約693万円)
2. 日数・時間加算: 年間290日開所、平日・休日ともに長時間開所(計約280万円)
3. 処遇改善加算: 職員の給与改善とキャリアアップ処遇改善を実施(計約425万円)
これらを合計すると、1支援単位あたりの補助額は年間1,400万円に達する可能性があります。
「補助金のための運営」ではなく「質の向上のための資金」
もちろん、開所日数や時間を増やせば、それだけ人件費や光熱費などのコストも増加します。しかし、ここで重要なのは「入ってくる補助金以上に持ち出しが増えるわけではない」という点です。
得られた資金を原資として職員を十分に雇用し、給与を上げて定着率を高める。ベテラン職員が育てば保育の質が上がり、保護者の満足度も向上。
そして、その体制が評価されてまた補助金が入る――。
このような「正の循環」を作り出すための経営判断として、補助金最大化のシミュレーションを活用してみてはいかがでしょうか。
複雑な補助金申請や勤怠管理の業務負担は、ICTシステムの導入で軽減できる
齊藤:ここまで補助金の最大化について解説してきましたが、現場の皆さまにとって最大のハードルは、申請に伴う膨大な実績記録の集計作業ではないでしょうか。
「どの日・どの時間に・職員が何人いたか」
「児童の平均利用人数は何人か」
…これらを紙やExcelを遣った手作業で管理するのは、かなりの業務負担といえます。
ここで活用したいのが、学童保育専用のICTシステム「Hokally(ホーカリー)」です。
Hokally(ホーカリー)を導入すれば、日々の打刻データをもとに必要な数値を自動で集計できます。
補助金申請に必要なデータを自動集計
職員配置の記録
「この時間帯に有資格者が何名いたか」をシステムが自動判別し、帳票として出力します。
児童の利用実績
入退室のQRコード打刻により、日々の利用人数や延長保育の時間を正確に記録します。
手作業による計算ミスや記録漏れのリスクをなくし、複雑な補助金申請をスムーズに進められる点は、運営者にとって強力な味方となるはずです。
保護者との連絡や請求業務も効率化
ICTのメリットは申請業務だけにとどまりません。保護者との連絡や毎月の請求業務といった、日常の事務負担も劇的に軽減します。
例えば、保護者アプリを通じて欠席連絡を受け取れば、朝の電話対応に追われる時間はなくなります。また、延長保育料やおやつ代なども、利用実績に基づいてシステムが自動計算するため、集金袋でのやり取りや計算の手間からも解放されます。
「ICT化推進事業」で導入コストを抑える
「システムを入れたいが、費用が心配」という声も聞かれますが、ここで前述の「ICT化推進事業」が活用できます。
この補助金では、システムの導入費用だけでなく、利用に必要なタブレットやPC、プロジェクター等のハードウェア購入費も上限50万円の範囲で補助対象となります。
業務効率化によって生まれた時間を、本来の目的である「子どもたちへの保育」や「職員のケア」に充てるためにも、補助金を活用したICT導入を検討してみてはいかがでしょうか。