熊本県大津町の全町立小中学校(町立小学校7校、町立中学校2校)では、2020年5月に「れんらくアプリ」を導入して活用しています。「れんらくアプリ」の導入と活用について、大津町役場 学校教育課 林田様、大津南小学校 教頭 福田様に詳しくお話を伺いました。
大津町は熊本市の東方に約19Km、阿蘇山との中間に位置しており、別府・阿蘇・雲仙などの国際観光ルートの路線上にあります。阿蘇外輪山西部に連なる広大な森林、原野地帯とゆるやかな傾斜をなして広がる北部畑地帯、阿蘇山を源として東西に貫流する白川の豊かな流れによって南部平野は肥沃な水田地帯を形成しています。特産品は唐芋(一般的にはサツマイモという。)で、その生産量は熊本県1位です。人口は3万5621人と近年ますます増加を続けています。
※人口は令和3年8月末現在。
大津町では、学校教育の基本理念として「夢を持ち、夢を育み、夢を叶える教育実践」を掲げています。そして、生きる力を身につけ、よき社会の形成者として未来を拓く子どもの育成をめざして、教師、職員一同が懸命に取り組んでいます。
また、前期・後期制を、平成17年度から全町立幼稚園・小中学校で実施しています。前期・後期制導入の理由は、教師と子どものふれあいを大切にしながら、じっくりと教育活動が展開できる「特色ある学校教育」の実現をめざすためです。
現在、大津町の町立小学校は7校、町立中学校は2校あり、小学校に通う児童は2574名、中学校に通う生徒は1150名です。
※児童・生徒数は令和3年8月末現在。
使用している機能は、「欠席・遅刻連絡」、「お知らせ配信」、「アンケート」を活用しています。
教師・職員の負担軽減、煩雑化する業務の中での効率化、児童・生徒に向き合う時間の確保など、働き方改革につながっています。
児童・生徒の欠席の連絡対応が、朝の学校の大きな負担になっていました。基本、欠席の連絡は電話になりますが、電話が集中してつながらないことも多々ありました。欠席の連絡は電話に出た教師や職員が保護者から欠席とその理由を聞き、児童・生徒の担任に伝えていました。また、連絡がないまま欠席している児童・生徒の保護者に、確認のために担任が連絡を入れることもありました。こうした負担の大きい校務の改善が必要だと考えました。
大津町では令和元年度に町立幼稚園・保育園で「れんらくアプリ」の導入を行っています。町立幼稚園・保育園での運用が順調に進んでおり、保育士や職員の負担軽減につながっている実績も聞いていました。
小中学校においても「学校における働き方改革」の一環として、教師や職員の負担をどう減らしていくかが焦点になっていました。そこで大・中規模校といわれる児童・生徒が300名以上在籍している小中学校からの導入について検討を始めました。
導入の決め手は、町立幼稚園・保育園で導入しており、職員の負担軽減につながっていた点でした。町立幼稚園・保育園に話を聞く中で、朝の時間の電話対応が大幅に少なくなったことや、保護者が昼夜問わず欠席・遅刻の連絡をアプリ内で行うことができ、利便性が非常に向上しているとのことでした。また、アンケート機能を活用することで、保護者の意見をすぐに集約することができる点も大きな決め手になりました。
当初は大規模校での導入を計画していましたが、新型コロナウイルス感染症の流行拡大、また、全国一斉の臨時休校措置があったため、大規模校だけでなく、すべての小中学校への導入に切り換えました。そして、2020年5月に全ての小中学校で導入が完了しました。
まず小中学校にお願いして、児童・生徒の情報を作成してもらい、VISH株式会社へ「れんらくアプリ」の登録作業サポートを依頼しました。
保護者へのお願いは、5月に登録用紙を各校に送り、保護者に配布してもらいました。 5月は臨時休校中でしたが、学習プリントの進捗状況の確認などを行うために、児童・生徒には分散登校日を設けていましたので、登校した児童・生徒に登録用紙を渡しました。また、使用している一斉送信メールでも周知を図り、保護者に「れんらくアプリ」のインストールをお願いしました。
どういう内容のアプリですか、という問い合わせが少しあった程度で、批判的・否定的な問い合わせはありませんでした。主に低学年の保護者の中にはすでに幼稚園・保育園で「れんらくアプリ」を使っていた方もおり、親しみがあったのかもしれません。
インストールの進み具合は、登録を開始してすぐに100%にはなりませんでしたが、半年後の調査ではほぼ100%になっています。
各校での運用責任者になる教頭先生に集まってもらい、町立幼稚園・保育園の先生方に協力してもらって研修を実施しました。その後はVISH株式会社が用意してくれたマニュアルを各校に配付するとともに、教頭先生を中心に各校内で展開してもらいました。
また、大津町として「れんらくアプリ」を導入したことは、「広報おおづ2020年6月号」に掲載したほか、冬休みの際には何かあったときの連絡を「れんらくアプリ」で行ってもらうように、大津町のWebサイトにも掲載しました。
以前との決定的な違いは、欠席することが事前にわかるだけでなく、その理由を記入してもらえることにあります。担任は欠席理由を把握することで、児童・生徒の状況がわかりますので、欠席した次の日の登校時に声をかける際には具体的な声がけを行うことができます。
また、2020年度は「れんらくアプリ」による欠席連絡は、毎朝集計して担任に伝えていました。2021年度からはタブレットが一人1台ずつ使用できるようになりましたので、担任は自分のクラスの欠席状況をリアルタイムで把握できるようになりました。※各校により運用状況の違いはあります。
保護者から学校への連絡手段は連絡帳や電話でしたが、「れんらくアプリ」導入により、メインは「れんらくアプリ」になり、電話連絡はほとんどなくなりました。導入前は、本来は授業の準備をしたい時間帯に欠席連絡の電話を受けることがありましたが、今では児童・生徒に向き合う準備に充てられています。
2021年9月の台風14号は、9月17日の午後から夜にかけて九州地方への最接近・上陸が予測されていました。前日の16日に17日の登校は普段通りですが、下校に関しては保護者のお迎えを決めました。そして「れんらくアプリ」のアンケート機能を使って、保護者の対応について次の3つから選択してもらいました。
1.開始時刻に迎え可能
2.学童を利用
3.開始時刻の迎え困難のため教室待機
このアンケートを16日に発信して、17日朝に確認したところ、ほぼすべての保護者から返信がありました。その内容を把握した上で、台風に伴う臨時的な対応を取ることができました。
また、集計結果をCSVファイルで出力できますので、クラスごとの一覧を作成して担任へのフィードバックもできました。短時間で効率的に確認作業を進めることができ、災害時に短時間で対応できるアンケート機能は、いざというときの備えになります。
お知らせは、以前は紙媒体での通知がメインでした。今では「れんらくアプリ」の機能を使って、お知らせを通知していますので、紙媒体はほとんどなくなりました。重要なお知らせの場合、「れんらくアプリ」に加えて紙媒体も使うことがあります。 紙媒体は児童・生徒に配布して、帰宅後に保護者に渡していましたので、紛失や渡し忘れなどもありましたが、「れんらくアプリ」は児童・生徒を介さずに直接保護者に届けられますので、スムーズな周知が図れます。また、未読の保護者を把握することができるので、改めて連絡をすることが可能です。紙媒体は保護者が紛失することもありましたが、「れんらくアプリ」なら過去のものも見返すことができます。
学校における働き方改革の推進が求められる中で、「れんらくアプリ」は教師・職員のその一助になっていると思います。煩雑化する業務の中で、欠席の電話連絡といった単純作業に時間を取られるのではなく、児童・生徒に向き合う時間、教育の質を上げるために時間を使えるようになりました。単に時間を削減できたということではなく、その時間を質の向上に向けることができるようになったことが、非常に評価できます。
機能面では現在の内容で十分だと考えています。ただ、クラウドシステムですので、障害が発生することはゼロではありません。その際にはいち早く一報をいただきたいと思います。
※障害発生時はインターネット経由ではなく、携帯電話で受信できるショートメールとTwitterでいち早くお伝えしています。障害発生をお伝えするショートメールへの各校担当者の登録と「れんらくアプリ」Twitterアカウントのフォローをお願いしました。
大津町立小中学校様、本日はお忙しい中、
貴重なお話をありがとうございました。