【コラム】習い事業界の当たり前を疑い、「子どものために」を考え続ける。少子化時代に選ばれ続けるスクール経営の原則
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「生徒数が集まらない」「従来の方法で行き詰まっている」――
少子化と競争激化に直面する多くの習い事教室が、このような課題を抱えています。
しかし、福岡県北九州市の「ときわスイミングスクール城野」は、業界最大の集客イベントである「短期教室」をあえて廃止するという、一見リスクの高い決断を下しました。
その背景にあるのは、「本当に子どものためになるか」をゼロベースで問い直す徹底した経営思想です。
本記事では、支配人の淺野氏が語る、時代に左右されず地域に愛され、選ばれ続けるスクール経営の「再設計」のストーリーをお届けします。
目次
◆少子化時代に、あえて「子ども専門」の習い事を提供。ときわスイミングが地域に選ばれ続ける理由
子どもの数が減り、地域の競合とのシェア争い、トレンドの習い事との競争も激化する昨今。
多くの習い事施設の経営者が「生徒数がなかなか増えない」「集客が難しくなりつつある」といった悩みを抱えています。
全国のスイミングクラブの多くが、今、厳しい状況に置かれています。
でも、少子化が進み、業界が縮小するなかで、これまでのやり方を続けていても、なかなか突破口は見えづらいのではないでしょうか。
そんな習い事業界において、北九州のときわスイミングスクール城野さまは特色ある経営方針を打ち出し、スクールに活気をもたらしています。
「子ども専門」に振り切り、スイミング業界にとって集客の要であるはずの「長期休暇の短期教室」も数年前にやめられたと伺いました。
しかし、先週の体験会では、一日の体験日に対してなんと約30名が申し込まれたそうですね。これは、他のスクールからしても、かなりインパクトのある結果だと思います。
この集客力は当スクールの自慢ですね!しかし、当スクールはここ5年ほど短期教室は開催していません。
――「なぜ、短期教室をやめても集客ができるのか?」
今回は、業界の「当たり前」を疑うことから始まった、ときわスイミングスクール城野さまの「経営の再設計」についてじっくりとお聞きします。
◆「業界の当たり前」を疑う。短期教室をやめた理由
スイミング業界において、長期休みの「短期教室」は最大の集客施策であり、これをやめるのは経営者にとって非常に勇気が要る決断だったと思います。
なぜ短期教室を廃止されたのでしょうか?
これまで当スクールでも夏休みや冬休みの短期教室は実施していました。
ただ、利用状況や入会動向、現場の運営状況などを改めて分析してみると、「本当に今の当スクールに合った形なのだろうか」と考えるようになったんです。
短期教室には毎回たくさんの方に参加していただいていましたが、帰省中に利用される方や既存会員のお子様も多く、どうしても継続利用にはつながりにくい傾向がありました。
そのため、新しいお客様との接点づくりという面では見直す余地があると感じていたんです。
単に意味がないと切り捨てたのではなく、スクールでの実態を見つめ直した結果だったのですね。
短期教室は通常営業が始まる前の時間帯に行うことが多いので、準備や片付けも含めると、現場コーチの負担は決して小さくありません。
もちろん短期教室自体は、意義のある取り組みだと思っています。
ただ、長期休暇のたびに負荷が集中すると、コーチの疲労も蓄積していきます。
その結果、本来私たちが最も大切にしたい本科スクールでの指導品質やサービスレベルに影響が出てしまっては本末転倒です。
コーチが良いコンディションで指導できる環境を整えるために、短期教室にかけていた人的・時間的なリソースを、本科スクールや体験会の充実へ向けることにしました。
まず日頃から通ってくださっている会員様へのサービス品質を最優先に考えているのですね。
例えば、少人数レッスンやコーチ指名によるマンツーマンレッスンなどを実施しています。
「水が苦手だから克服したい」「もっときれいなフォームで泳ぎたい」「泳力を伸ばしたい」といった、お客様一人ひとりの目標に合わせて、より専門性の高い指導を提供できるようになりました。
結果として、コーチ陣も通常レッスンの質向上や会員様へのサポートにより多くの時間とエネルギーを注げるようになり、会員満足度の向上にもつながっていると感じています。
短期教室をやめるというのは、業界的に見ても簡単な決断ではありませんでした。
ただ、「昔からやっているから続ける」のではなく、「今の地域性やお客様のニーズ、そして現場の状況に本当に合っているのか」という視点で見直した結果です。
◆釣り、かき氷、耳つぼジュエリー…「レッスン」にとらわれないイベントを開催する訳
さらに、ときわスイミングスクール城野さまといえば「イベント数日本一」を掲げ、プール以外での地域との接点を驚くほど多く作っていらっしゃいますね。
はい。子どもが喜ぶためなら、プールの枠にとらわれずに何でもやります!
スクールのすぐ近くにモノレールが走る紫川という川があるのですが、そこまで子どもたちを連れて行って、プロや熟練した方にお手伝いいただき、SUP(スタンドアップパドル)をしたり、魚釣りをしたりしています。
過去には、知り合いの競輪選手に競技用の自転車をプールサイドに持ってきてもらって、選手が全力でバイクを漕ぐ動力と連動したかき氷機で、子どもたちにかき氷を振る舞うイベントもやりました。会員の子ども達はもとより、保護者の方々も我々のコミュニティの大事な部分になっており、お手伝いいただける方も多数いらっしゃいます。
紫川でのSUP(スタンドアップパドル)体験イベントの様子。
自転車を漕ぐ動力と連動させたかき氷機で、子どもたちにかき氷を振る舞うイベントの様子。
リオオリンピック銀メダリスト坂井聖人選手を招いて、一緒にレッスンをするイベントの様子。
レッスンを見に来ている保護者の方向けにも積極的にイベントを実施されているとお聞きしました。
2階の観覧スペースは、保護者が快適に過ごせるよう、オープンな空間に改装しました。
座って過ごせる畳のスペースもあるのですが、そこに地元の整骨院の先生を呼んで、保護者向けに肩のマッサージや姿勢チェックをしたり、スタッフの特技を活かした耳つぼジュエリーのブースを出したりしています。
ときには地元の居酒屋や人気スイーツ店を呼んで、流行りのゼリーやトレンドスイーツを販売してもらうこともあるんですよ。
これらは、特別に講師を呼んでいるのでなく、私の知人や生徒の保護者さんなど、知り合いの方にお願いしています。
お店をやっている人、面白い特技を持つ人と仲良くなったら、「うちでやってみない?」という話に自然と発展していきます。
ときわスイミングスクール城野がハブになってお互いを繋ぐ役割になっているんですね。こうした取り組みが口コミを生む仕掛けにつながっているかもしれないですね。
そうかもしれないですね。でも私は、こうしたイベントを「生徒集めのためのキャンペーン施策」だと思って開催している訳ではありません。
子どもだけでなく、保護者の方々にとっても「ここに来るのが楽しい、ワクワクする」空間にしたい。
そして、「大人が子どものために動く」機会をつくりたい。それが私の願いなんです。
子どもへのレッスンだけにフォーカスするのではなく、地域の大人を巻き込んで、人がつながる場を作る。
それを自然と実践されているからこそ、ときわスイミングスクール城野は地域で愛されているのかもしれませんね。
キッザニア遠足の様子。
キッザニア遠足の様子。
◆地域の幼稚園・保育園との連携が、継続的なスクール利用につながる
ときわスイミングスクール城野では、地域の幼稚園・保育園との連携にも力を入れているそうですね。
はい。現在、地域の幼稚園・保育園10園近くと提携し、園の活動の一環として水泳指導を行っています。
私たちが大切にしているのは、幼少期から水泳に親しみ、長く継続していただける環境をつくることです。
幼稚園や保育園の頃から当スクールの雰囲気や指導に触れていただくことで、小学校へ進学した後も継続して通ってくださるお子様が多くいらっしゃいます。そうした積み重ねが、地域に根差した安定したスクール運営にもつながっていると感じています。
提携園のお子様は、どのような成長を見せていますか?
提携園から通われるお子様の中には、週1回・1時間のレッスンでも、卒園する頃にはクロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライを習得し、個人メドレーまで泳げるようになる子も毎年います。
もちろん泳ぎの上達も大切ですが、それ以上に「できなかったことができるようになる喜び」や「挑戦する気持ち」を育てられることが、水泳の大きな価値だと思っています。
水泳は、基礎体力や心肺機能、集中力などをバランスよく育むことができます。「東大生が幼少期にやっていた習い事で一番多いのがスイミング」という話も有名です。
最近では野球の大谷選手やサッカーの本田選手も水泳経験者であることが知られ、「さまざまなスポーツの土台づくりになる」という認識も広がり、保護者の皆さまからも高い評価をいただいています。
私たちとしても、水泳を単なる習い事ではなく、お子様の成長を支える基礎教育の一つとして捉えています。
今後も地域の幼稚園・保育園との連携を大切にしながら、子どもたちの成長を長期的に支えられるスクールであり続けたいですね。
◆本当に必要なのは、“子どものため”を問い直すこと
淺野支配人のお話を伺っていると、数々の仕掛けの裏にはすべて「本当に子どものためになるか」という一貫した経営思想があることが分かります。
すべてはそこに繋がっています。たとえば、私たちが事務作業の効率化のためにスクール管理システムを導入したのも、手続きの負担を限界まで減らすためです。
以前はフロントで入会手続きを行う際、1人あたり30分ほどかかっていました。それを事前のWEBアンケートやデジタルフォームに変更したことで、お客様への対応時間を5〜10分にまで短縮したんです。
フロントの業務負担を劇的に減らしたからこそ、スタッフが「今日の服、カッコいいじゃん」と、やってくる子どもたちを最高の笑顔で出迎え、変化に気づいて声をかけてあげる余裕が生まれます。
施設を見学させていただいた際にも、支配人・コーチ・フロントのスタッフ全員が作業の手を止めて、受付やロビーで子どもや保護者に声を掛ける様子が印象的でした。
モチベーション管理の面でも、デジタルを上手く活用されているそうですね。
システム上では「長期未進級者」のデータもチェックしていて、3ヶ月や半年間ずっと進級が停滞している生徒が誰なのか、出席回数は足りているのかがひと目でわかるようになっています。
欠席が続いている子やなかなか進級できていない子がいれば、テスト後に「前はちょっと平泳ぎの足がおかしかったけど、今回はだいぶ良くなったよ」といったレビューを残し、個別に声をかけて寄り添うことができるんです。
レッスン中、出席確認をする淺野氏。
経営者がやるべきことは、経営そのものを「誰のために、どう設計するか」と問い直すことなのですね。
スクールの実態を見つめないまま、「周りのスクールもやっているから」と短期教室をやり続けたり、効果が出ないのにチラシを撒き続けたりすることは、今の時代には経営リスクでしかありません。
少子化の時代、みんな苦しいですが、当スクールも苦しいところはあります。
だからこそ、先頭に立って当スクールの取り組みを伝えて、業界全体を盛り上げていきたいんですよね。
私たちはこれからも、昔のやり方に固執せず、常に「子どものために何ができるか」を考えながら、地域に選ばれるスクールであり続けたいと考えています。
今回お話を伺った、ときわスイミングスクール城野 支配人の淺野晃平様。
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この記事の執筆者
ライター:渡辺
スコラプラス編集部スタッフ。
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2026年の抱負はピラティスでインナーマッスルと美姿勢を手に入れることでしたが、物足りなさを感じてパーソナルジムへの乗り換えを検討中。
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