近年、配慮が必要な子どもが増えていること、他の先進国と比較すると水準が低いことなどから、配置基準の見直しが進んでいます。2024年度には3・4・5歳児の配置基準の見直しが行われ、4・5歳児は制度発足以降、76年ぶりの改正となったことから注目を集めました。1歳児の配置基準も見直しが進んでおり、2025年現在は「1歳児配置改善加算」という形で、基準改正に向けて国が動き出しています。
この記事では、2024年・2025年に改正された3・4・5歳の配置基準の見直しと1歳児配置改善加算の内容、配置基準の計算方法まで、詳しく解説します。ぜひ最後までお読みください。
目次
保育園の配置基準とは?
まずは、保育園で配置基準を設定している目的や理由、保育の質との関係について解説します。
保育園の配置基準が定められる目的
配置基準は「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(設備運営基準)」の一部として定められており、保育の質を確保する仕組みの一つです。
乳幼児は、転倒や誤飲などの事故リスクが常にあるため、保育士が一度に多くの子どもを見る状況では、安全確保が難しくなります。年齢ごとに「保育士1人あたり子ども〇人まで」と上限を定め、どの施設でも安全で適切な保育を受けられるようにすることが、配置基準の目的です。
ただし、配置基準はあくまで最低ラインです。国やこども家庭庁は、基準以上の職員配置を推奨しており、公定価格の加算措置によって手厚い配置を促しています。以前は待機児童解消のために受け皿の拡大が重視されていましたが、現在は質の向上を重視する方向へ政策が転換しているともいえます。
※公定価格:国が定めた、子ども一人あたりにかかる保育の費用の基準額
※加算措置:基準以上の取り組みを行うことで、公定価格が上乗せされる仕組み
保育士の配置基準と保育の質
保育園は、子どもを預かってお世話をするだけではなく、発達に応じた遊びの内容を考え、心身の成長を促す役割も担っています。もし配置基準ギリギリの人数で運営している場合は、安全確保が優先になり、子どもの気持ちに寄り添った声かけや対応が難しいときもあるかもしれません。
一方で、基準よりも手厚く保育士を配置できれば、保育士の業務や心に余裕が生まれます。子ども達がやってみたい活動に応じられたり、個別対応がしやすくなったりと、保育の質向上にもつながります。
【年齢別に解説】保育士の配置基準
保育士の配置基準は安全確保と、個々の発達に沿った活動をするために、年齢別に分かれています。ここからは、主に認可保育所の配置基準について解説します。
| 0歳児 | 1歳児 | 2歳児 | 3歳児 | 4・5歳児 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 保育士1人に対する子どもの人数 | 3人 | 6人 (5人の場合は加算あり) | 6人 | 15人 | 25人 |
このほか、園児の人数に関わらず、施設全体で常時2名以上の保育士(または職員)を配置することが義務付けられています。
0歳児:保育士1人あたり子ども3人
0歳児は、月齢によって睡眠や食事、授乳などの一人ひとりの生活リズムや、運動機能の発達が異なります。個別対応が必要なため、配置基準も3対1と手厚くなっています。自分で危険を回避する能力が未発達で、SIDS(乳幼児突然死症候群)のリスクもあるため、細心の見守りが必要です。
1歳児:保育士1人あたり子ども6人(5人の場合加算あり)
1歳児は、現行の配置基準では6対1となっています。月齢により運動機能などの差が大きく、情緒面では自我が芽生えるため、気持ちに寄り添った対応が必要な時期です。
「現行の基準では、安全確保と丁寧なサポートの両立が難しい」という現場の声があり、2025年度からは1歳児の配置を5対1で運用し、一定の基準を満たす施設に対して「1歳児配置改善加算」が創設されました。後述で詳しく解説します。
2歳児:保育士1人あたり子ども6人
2歳児の配置基準は、1歳児と同じく6対1です。2歳児は「魔の2歳児」や「イヤイヤ期」と呼ばれる第一次反抗期を迎える時期で、かんしゃくや友達とのトラブルが増えがちです。また、トイレトレーニングが本格化し、排泄の自立に向けた個別のサポートも必要なため、手厚い配置が必要とされています。
3歳児:保育士1人あたり子ども15人
以前は20対1でしたが、2024年度から15対1へ改善されました。
3歳になると集団での活動が増える一方で、まだ自己中心的な思考も強いため、友達との関わりには保育士の仲立ちが必要です。以前は2歳児の6対1の基準から、保育士1人あたり子どもが20人と大幅に増えていましたが、15人に改正されたことでより丁寧に関われるようになりました。
4歳児・5歳児:保育士1人あたり25人
3歳児同様、4歳児・5歳児の配置基準は2024年度から、従来の30対1から25対1へと改善されました。
4・5歳児は、排泄や身支度などの生活面が自立し、保育士は子どもの知的好奇心や社会性などの力を育む役割が強くなります。基準改善により、保育士が一人ひとりの子どもの内面的な成長や、他者との関わりをよりサポートできる環境に近づきました。
2024・2025年の保育園配置基準改正まとめ
2024年から2025年にかけて行われた、配置基準の改正について解説していきます。
1歳児の配置改善加算が2025年度から開始
2025年度から、1歳児の配置基準である6対1は維持しつつ、5対1以上の手厚い配置を行う施設に対して、配置改善をした人件費相当額を加算で補填する制度が開始されました。配置基準を5対1に引き上げると、保育士不足で人材確保が難しく基準不適合となる施設が出る可能性があるため、現在は配置改善加算の形をとっています。
【対象となる施設区分】
・保育所
・認定こども園(保育利用の2・3号)
・小規模保育事業(A型・B型)
・事業所内保育事業(A型基準・B型基準・保育所型)
1歳児の配置改善加算を取得するためには、次の要件をすべて満たす必要があります。
・1歳児の職員配置を5対1以上に改善している
・処遇改善等加算の区分1~3を、すべて取得している
・業務においてICTの活用を進めている
・施設・事業所の職員の平均経験年数が10年以上
これらの要件は、職員の処遇改善や業務負担の軽減にも取り組んでいる施設を評価するために、設定されています。
中でも注意したいのは、ICTの活用に関する要件です。
3・4・5歳児配置基準を2024年度から見直し
2024年度から、4・5歳児は30対1から25対1、3歳児は20対1から15対1に、配置基準が見直されました。特に、4・5歳児は制度発足以降、約76年ぶりの改正となっています。
幼児期の子どもたちは、遊びや生活の中で他者と関わり、社会性や思考力を伸ばす時期を過ごします。保育士1人が見る子どもの人数が減ることで、一人ひとりの気持ちに寄り添った対応ができ、子ども達がさらに力を伸ばせる環境になることが期待されます。
保育園の配置基準を計算する方法
ここからは、実際に配置基準を計算する方法を紹介します。
保育士の配置人数の計算方法と端数処理
保育士の配置人数は、施設の利用定員か、月初日の在籍子ども数に基づいて、各年齢の配置基準を割ることで、最低限必要な保育士数が定まります。基準を満たすために、小数点以下の端数は切り上げが一般的です。
【例】0歳児が16人いる場合、16人÷3=5.33人となり、最低限6人の保育士が必要
また、異年齢合同保育時は、その場にいる一番低い年齢の基準に合わせて計算するか、それぞれの年齢基準で計算しますが、自治体によりルールが異なります。
保育園の常勤換算とは?
児童福祉施設の設備及び運営に関する基準では「保育士定数は、子どもを長時間にわたり保育できる常勤を確保することが原則であり、望ましい」とされています。
※保育士定数:園に最低限配置しなければならない保育士の総人数
常勤保育士・短時間勤務保育士の定義は、こども家庭庁が次のように通知をしています。最低基準における定数上の保育士について、「常勤の保育士」とは、次に掲げる者をいい、「短時間勤務の保育士」とは次のいずれにも該当しない者をいうものとする。
①当該保育所等の就業規則において定められている常勤の従業者が勤務すべき時間数(1か月に勤務すべき時間数が120 時間以上であるものに限る。)に達している者
②上記以外の者であって、1日6時間以上かつ月20日以上勤務するもの
出典:こども家庭庁「保育所等における常勤保育士及び短時間保育士の定義について(通知)」
しかし、実際には家庭との両立や保育士の就労継続を支援する観点から、短時間勤務の保育士や、パート・アルバイトなどの非常勤職員が働くことも認められています。
最低基準上の保育士定数の一部に、短時間勤務の保育士や非常勤職員を充てる場合は、その職員が常勤職員何人分に相当するかを把握する「常勤換算」が行われます。国や自治体から出る施設型給付費の支給の適正化を図ることも目的として行います。
実際には、常勤以外の職員の1か月の勤務時間数の合計を、施設・事業所の就業規則等で定めた常勤職員の1か月の勤務時間数で割ることで、常勤換算値を算出します。
常勤換算では、端数処理として四捨五入や小数点以下の切り捨てなどは行いません。
【例】
常勤職員の所定労働時間を、月160時間(1日8時間・週5日勤務)とする保育園で、週20時間勤務のパート・Aさんが勤務している場合
計算式:80時間(Aさんの1か月の労働時間)÷160時間(常勤の所定労働時間)=0.5
結果:Aさんは、常勤0.5人分としてカウントされます。
保育園の配置基準・常勤換算の計算時の注意点
配置基準や常勤換算の計算をするときには、次の3点に注意が必要です。
1. 配置基準でカウントできる職員の範囲
配置基準の計算に含められるのは、保育士資格を持ち、保育業務に直接従事している職員の労働時間のみです。園長、事務員、調理員、バスの運転手などは、保育士資格を持っていても、保育業務を行っていない時間は算入できません。ただし、園長が保育業務を兼務する場合などの例外や、自治体によってもルールが異なります。
2. 配置基準でカウントできる時間の範囲
配置基準の計算に用いる労働時間は、実際に保育に従事した時間です。有給休暇や法定の休憩時間、研修時間などは、労働時間から除外して計算します。
3. 自治体ごとのルールの確認
異年齢合同保育時の配置基準の計算方法や、常勤の所定労働時間を月何時間とするかなど、配置基準や常勤換算のルールは、事業所がある市区町村によって異なる場合があります。必ず詳細を確認しましょう。
保育施設形態別の配置基準
これまで解説してきた配置基準は、主に認可保育所のものです。保育施設の形態によって、認可保育所とは基準が異なる場合があります。
小規模保育事業
小規模保育事業は、主に0歳児から2歳児までの子どもを対象とし、定員が6人から19人以下の少人数で保育を行う施設です。小規模保育事業は認可保育施設ですが、A型・B型・C型に分かれており、配置基準や職員の資格要件が異なります。
| 配置基準 | 保育者の資格要件 | |
|---|---|---|
| A型 | 認可保育園の配置基準+保育士1名 | 全員保育士資格取得者 |
| B型 | 認可保育園の配置基準+保育士1名 | 職員の50%までは資格なしでも可(研修等で代替) |
| C型 | 0歳児~2歳児の子ども3名に対して家庭的保育者1名が基本。保育補助者を配置する場合は、園児5人に対して2人とすることができる。 | 0歳児~2歳児の子ども3名に対して家庭的保育者1名が基本 保育補助者を配置する場合は、園児5人に対して2人とすることができる 保育士資格は必須ではない 市町村が行う研修を修了した家庭的保育者が中心 |
認定こども園
認定こども園は、幼稚園の教育機能と、保育園の保育機能の両方を併せ持つ施設で、保育認定の子どもと、教育認定の子どもがいます。施設の成り立ちなどから、幼保連携型・幼稚園型・保育所型・地方裁量型の4つのタイプに分かれます。
【資格要件】
・幼保連携型
保育教諭(幼稚園教諭と保育士の資格を両方保有)が原則だが、どちらかの資格のみでも勤務できる経過措置あり
・幼稚園型/地域裁量型
満3歳未満は保育士資格が必要。満3歳以上は両免許・資格の併有が望ましいが、どちらかでも可。
・保育所型
満3歳未満は保育士資格が必要。満3歳以上は両免許・資格の併有が望ましいが、どちらかでも可。ただし、教育相当時間以外の保育に従事する場合、保育士資格が必要。
0〜2歳児では保育園の配置基準が適用されますが、3〜5歳児は教育時間は、幼稚園の学級編成の基準が基本となります。一方で、保育認定の子どもが教育時間以外の時間に過ごす場合、保育園の配置基準が適用されます。実際には3〜5歳児は教育利用と保育利用の混合クラスで運営されることが多いため、時間帯や子どもの認定区分によって常勤換算の計算方法が細かく定められています。
認可外保育施設
認可外保育施設は、国の認可基準とは異なる、独自の方針や基準で運営されている保育施設を指します。国の認可基準は満たしていないものの、子どもの安全を守るために「認可外保育施設指導監督基準」が定められています。配置基準は、認可保育所の基準とは異なり、2024年度の改正前の配置基準となります。
| 0歳児 | 1・2歳児 | 3歳児 | 4・5歳児 | |
|---|---|---|---|---|
| 保育士1人に対しての子どもの人数 | 3人 | 6人 | 20人 | 30人 |
参照:文部科学省「認可外保育施設指導監督基準」
資格要件は自治体にもよりますが、保育士資格所持者が保育従事者のおおむね3分の1以上とされています。
企業主導型保育所
企業主導型保育事業は、企業が従業員の働き方に応じて設置する保育施設です。認可外保育施設に分類されますが、国の助成を受けて運営されるため、別途基準が定められています。
配置基準は、原則として認可外保育施設の配置基準と同等以上であることと、19名以下の小規模の企業主導型保育所の場合は、小規模保育事業B型と同様、1名の追加配置が求められます。資格要件は、保育に従事する職員のうち、保育士の割合は半数以上と定められています。残りの半数は、保育士資格がなくても「子育て支援員研修」を修了した者であれば保育に従事できます。
まとめ:配置基準を遵守して子ども達の安全確保を
配置基準は子ども達の安全を守るためのものです。シフト作成時は不足がないかを複数人で確認する、日常の保育でも基準を意識して職員が動き合うなど、違反にならないように気をつけましょう。
また、配置基準ギリギリではなく、余裕のある人員配置をしたり、ICTシステムなども活用して業務効率化をしたりすることで、保育の質と職員満足度の向上が期待できます。
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