待機児童対策や保護者の就労支援を目的に、近年「送迎保育ステーション」への関心が高まっています。駅前など利便性の高い場所でこどもを預かり、各保育施設へバスで送迎するため、保育の新たな選択肢として注目されています。
一方で「具体的にどのような運営体制なのか」「バスの安全管理はどのように行われているのか」「園と保護者の連携は十分に取れるのか」といった疑問や不安の声も少なくありません。送迎保育ステーションを効果的に機能させるためには、利便性だけでなく、安全対策や情報共有の体制整備が不可欠です。
この記事では、送迎保育ステーションの基本的な仕組みや導入事例、メリット・デメリットを整理し、円滑な運営を実現するためのポイントについて分かりやすく解説します。導入検討や情報収集の一助として、ぜひ最後までご覧ください。
【参照】
広域的保育所等利用事業実施要項(厚生労働省)
◆送迎保育ステーションとは?厚生労働省が推進する理由
まずは、送迎保育ステーションの仕組みを紹介します。
◎駅前からバスで保育園・幼稚園へ送迎するシステム
送迎保育ステーションは、保護者が駅前などの便利な場所に設けられた施設にこどもを預けて、バスで各園へ送り届ける仕組みです。
通常は保護者がこどもを直接園まで送迎しますが、送迎保育ステーションを利用すれば駅前で送迎を完結できるため、自宅や駅から離れた場所にある園でも通いやすくなります。「教育方針や保育内容に共感できる園に通わせたいけれど、距離が気になる」という家庭にとって、選択肢の一つになるでしょう。
自治体によって利用対象が異なりますが、一般的には次のような方針が多く見られます。
▶保育園に通うこどもが対象の場合
「保育標準時間」で認定を受けている家庭が対象となるケースが一般的です。
▶幼稚園に通うこどもが対象の場合
共働きなどで保育の必要性が認められた「2号認定」「3号認定」を受けている家庭が対象となることが多いです。
ただし、対象年齢や認定区分、利用条件は自治体ごとに細かく異なります。検討の際は、必ずお住まいの自治体の公式情報を確認してください。
◎送迎保育ステーションが注目される理由
送迎保育ステーションが広がる背景には、待機児童と保育需要の偏りの問題があります。
都市部では、駅に近い人気園に希望が集中する一方で、駅から離れた園に空きがあるケースも見られます。送迎保育ステーションを導入すると、駅前でこどもを預かり、郊外の園へバスで送ることで、地域全体の定員を有効に使えることがメリットです。また、新しい保育施設を建設するには、多くの費用と時間がかかります。送迎保育ステーションは既存の施設を活用できる場合もあるため、比較的迅速に対応できる施策といえるでしょう。
保護者支援の観点では、次のような効果があります。
・通勤時間と園の開所時間が合わない場合でも、ステーションの預かり時間を活用して通園できる
・送迎の負担が減るため、園選びの幅が広がる
厚生労働省も「広域的保育所等利用事業」および「こども送迎センター等事業」と位置づけ、待機児童解消や保育環境の整備に向けた有効な施策として、自治体への財政支援を行っています。制度を活用する自治体は年々増加傾向にあり、厚生労働省の「広域的保育所等利用事業【拡充】」によると、2018年度は28自治体(33か所)でしたが、2019年度には34自治体(41か所)へと拡大しており、国として普及を図っていることが分かります。
◎送迎保育ステーションの対象年齢・料金・利用時間
送迎保育ステーションの対象やサービス内容は自治体によって異なりますが、一般的な目安を紹介します。
▶対象年齢
多くの自治体で「1歳児クラスから就学前」とされています。バスの座席に一人で座って安全に移動できることが前提となるため、0歳児は対象にならない場合が一般的です。
また、年齢によってベビーシートの使用が必要になる場合があります。
▶利用時間
朝は7時頃からバス出発まで、夕方はバス到着から18時〜19時頃までが目安です。延長保育を実施している場合もあります。
▶利用料金
月額2,000円〜数千円程度、または1回数百円程度が一般的です。住民税非課税世帯などに対する減免措置を設けている自治体もあります。
なお、具体的な条件や金額は自治体ごとに異なります。お住まいの市区町村の公式情報を必ず確認してください。
◆【事例】流山市・松戸市・葛飾区の送迎保育ステーションの取り組み
送迎保育ステーションは、待機児童問題や保育需要の偏りを解消するために、各地で導入が進んでいます。ただし、地域によって人口構成や課題は異なるため、制度の設計や運営方法にも特徴があります。
ここでは、先進的な取り組みを行っている3つの自治体の事例を紹介します。
◎千葉県流山市:送迎保育ステーションの先駆け
| 利用対象 | 自宅から500メートル以上離れた市内認可保育園等に通う家庭のこども |
| 設置場所 | 流山おおたかの森駅前・南流山駅前の市内2か所 |
| 保育時間 | <月曜日から土曜日> 朝:7時~7時50分にステーションへ登園、8時頃にバス出発 夕方:16時頃にステーションを出発して各園を回り、17時頃にステーション着 延長保育利用で20時まで預かり可能 |
| 利用条件 | ・対象の園に在籍(入園予定)であること ・1歳以上で、自分の荷物を持って歩ける ・送迎中にバスの座席に座っていられる ・教育・保育給付認定(2号・3号)の標準時間認定 |
| 費用 | 月額2,000円、または1日100円 |
| 特徴 | ・建物の中にバスが入り、安全に乗り降りできる設計 ・週1回ほどは保護者が直接園へ送迎することを推奨 |
千葉県の流山市は、送迎保育ステーションをいち早く取り入れた自治体のひとつです。つくばエクスプレスの開業に伴って沿線にマンションが増え、子育て世帯が急増しました。駅周辺の保育園には希望が集中する一方で、駅から離れた園には空きがあるミスマッチの解消をする目的で、送迎保育ステーションを開始しました。
駅前の利便性と郊外園の活用を両立させた、実践的なモデルといえます。
【参照】
平成25年版 厚生労働白書 第2部 現下の政策課題への対応(厚生労働省)
送迎保育ステーションのご案内(流山市)
流山市送迎保育ステーション(令和7年度版)(流山市)
◎千葉県松戸市:市内複数箇所で送迎保育ステーションを展開
| 利用対象 | 自宅と幼稚園が離れている、幼稚園の預かり保育だけでは幼稚園への入園が難しい家庭のこども |
| 設置場所 | 松戸駅前、新松戸駅前などの市内12か所 |
| 保育時間 | 月曜日から土曜日 7時から19時まで (一部、土曜日の預かりが18時までの施設あり) |
| 利用条件 | ・対象幼稚園に在籍(入園予定)であること ・施設等利用給付2号認定者(または見込み者)であること ・就労等の要件で、対象幼稚園の開園時間だけでは、幼稚園への通園が困難であること |
| 費用 | 月額1,000円(別途、幼稚園のバス利用料あり) |
| 特徴 | ・同じ施設内で、預かり保育がお休みの日に一時預かりが利用可能(別途料金) ・一部施設内に託児機能付きコワーキングスペースを設置 |
多くの自治体が保育園送迎を中心にする中、松戸市は「働きながら幼稚園に通わせたい」というニーズに応えています。駅周辺を中心に12か所のステーションが設けられ、市内の広い範囲をカバーしている点も特徴です。
一部のステーションには、託児機能付きのコワーキングスペースが併設することで、仕事と子育ての両立を支援しています。
【参照】
松戸市送迎保育ステーション(松戸市)
松戸市送迎保育ステーションでの一時預かり(松戸市)
送迎保育ステーション内の託児機能付きコワーキングスペースについて(松戸市)
◎東京都葛飾区:金町駅周辺で送迎保育ステーションのモデル事業を開始
| 利用対象 | 送迎先の保育園等に在籍中、もしくは入園予定のこども |
| 設置場所 | 金町駅前の複合施設内キッズスペース(1か所) |
| 保育時間 | 朝:7時~8時にステーションへ登園、8時頃にバス出発 夕方:16時頃にステーションを出発して各園を回り、17時頃にステーション着 延長保育利用で20時まで預かり可能 |
| 利用条件 | ・区内に住所を有すること ・教育・保育給付認定(2号・3号)の標準時間認定 ・原則1歳児クラス以上(園によっては2歳児や3歳児以上の指定あり) |
| 費用 | 基本利用(7時~18時):月額2,000円 延長利用(18時~20時):日額400円または月額6,000円 |
| 特徴 | ・駅前の既存施設を活用 ・対象エリアを絞って小規模で実施 ・週1回ほどは保護者が直接園へ送迎することを推奨 |
東京都葛飾区の送迎保育ステーションは、モデル事業として2025年1月に開始しました。駅周辺での登園と降園を可能にして保護者の負担を減らし、駅から離れた保育所の利用を促して保育ニーズの偏りを防ぐことを目指しています。
バス1台につき、運転手のほかに保育士や看護師などの有資格者を含む2名以上が同乗し、置き去り防止装置や年齢に応じたチャイルドシートの使用など、複数の対策を講じています。
既存施設を活用しながら段階的に導入する点は、今後制度を検討する自治体にとって参考となるモデルといえるでしょう。
【参照】
葛飾区送迎保育ステーションモデル事業のご案内(葛飾区)
葛飾区送迎保育ステーションモデル事業 利用案内 (葛飾区)
◆送迎保育ステーションのメリット・デメリットと問題点
送迎保育ステーションは待機児童対策や保護者の就労支援として注目されていますが、導入や利用を考える際は、メリットだけでなくデメリットも理解しておくことが大切です。
ここでは、保護者と園・自治体の視点から、メリットと注意点を整理しましょう。
◎送迎保育ステーションを利用する保護者のメリット
保護者にとって最も大きなメリットは、送迎の負担が軽くなることです。自宅から遠い園まで毎日往復するのは時間も体力も必要ですが、駅前で預けられれば、通勤動線上で送迎できます。天候に左右されにくく、移動時間の短縮にもつながるため、負担が軽減できるでしょう。
また、立地や時間の条件が合わずに、入園を諦めていた園も選択肢に入ることもメリットです。家庭の価値観に合う、特色ある教育を行う園や、自然環境に恵まれた園にも通いやすくなります。長期休業中の預かりや延長保育に対応しているケースもあるため、働きながら幼稚園教育を受けさせたい家庭にとって、大きな支えになるでしょう。
◎園・自治体が送迎保育ステーションを導入するメリット
自治体にとっては、新しい保育園を建てなくても、既存の園を活用できる点が利点です。駅周辺に希望が集中する状況をやわらげ、地域全体の定員を有効に使えます。
駅から離れた立地の園にとっても、園児確保のチャンスが広がります。「自然豊かで広い園庭がある」「独自の教育カリキュラムがある」などの魅力があるにもかかわらず、立地の悪さで選ばれなかった園が、送迎保育ステーションによって入園希望をする家庭が増えます。結果的に、園経営の安定にもつながるでしょう。
◎送迎保育ステーションのデメリット・問題点
一方で、利用するうえでの課題もいくつか指摘されています。
▶こどもへの負担
バスの乗車時間が長い場合は疲れやすく、朝早く家を出て夕方遅く帰る生活リズムへの影響が出る可能性もあります。
また、園と送迎保育ステーションの2つの場所で過ごすため、こどもによっては環境の切り替えが負担になることがあります。
▶園の先生とのコミュニケーション不足
送迎保育ステーションでの引き渡しとなると、担任や保護者と直接話す機会が減るため「こどもの様子を細かく共有しにくい」と感じる場合もあります。
事例のように、週に一度は直接園へ迎えに行く機会を設ける、連絡帳やICTシステムで情報共有を充実させるなど、園と家庭の接点を作る工夫が求められます。
◆送迎保育ステーション導入・運営を成功させるポイント
ここからは、送迎保育ステーションの導入・運営を成功させるために欠かせないポイントを解説します。
◎安全管理の徹底:バスの置き去り防止と運行管理
送迎保育ステーションで最も大切なのは「バスの安全確保」です。
通常の園バスとは異なり、複数の園を巡回し、さまざまな年齢のこどもが乗り降りするため、運行ルートや乗車人数の管理は複雑になりやすい傾向があります。そのため「誰が乗車し、誰が降車したのか」を正確に把握できる仕組みを整えておくことが重要です。
▶送迎保育ステーションのバス運行に必要な対策
・運転手とは別に添乗員を配置し、ダブルチェックを行う
・乗車前後にこどもの人数を必ず確認する
・車内に取り残しがないか最終確認を徹底する
・置き去り防止の安全装置を設置する
さらに、バスの現在地を把握できる運行管理システムを導入することで、運行状況の可視化が可能です。安全対策の取り組みが見えやすくなることで、保護者の安心感につながります。
VISH株式会社が提供する「園支援システム+バスキャッチ」は、GPS車載機を活用したバスロケーション機能を備え、スマートフォンやパソコンからバスの現在地を地図上で確認できます。
また、朝にバスから降りて園に入室したときや、帰りに送迎保育ステーションへ到着したときに、職員が打刻を行うことで、保護者アプリに通知をすることも可能です。こどもの到着・引き渡し状況が共有されるため、より安心して利用しやすい環境づくりに役立ちます。
さらに、保護者向けアプリから欠席・遅刻・早退連絡が入ると、バス名簿に自動で反映します。伝達や転記のミスが起こりにくくなり、安全なバス運行と職員の負担軽減につながります。
◎保護者との連携強化:ICT活用でコミュニケーション不足を解消
送迎保育ステーションでは、担任保育士と保護者が直接顔を合わせる機会が減る傾向があります。その課題を補う手段として、ICTツールの活用が有効です。
紙の連絡帳や掲示物だけでは十分に伝えきれない日中の様子も、アプリを通じて写真つきで共有することで、保護者の理解と安心につながります。送迎保育ステーションを利用する家庭も、日々の活動内容を把握しやすくなるでしょう。
園支援システム+バスキャッチは、おたより配信や連絡帳機能も備わっているので、保護者との情報共有を円滑に行えます。印刷や配布の手間やコストを減らし、職員の負担軽減にもつながります。
▶園支援システム+バスキャッチの詳しい情報はこちら
◆まとめ:送迎保育ステーションはバス送迎が鍵
送迎保育ステーションは、待機児童対策や保護者の就労支援に貢献する施策の一つです。駅前など利便性の高い拠点で送迎を完結できることは、多くの子育て世帯にとって大きなメリットとなります。
一方で、安全なバス運行体制の構築や、園と家庭のコミュニケーションの確保などの課題も存在します。ICTシステムの活用も含めて、運営体制を総合的に整備することで、より安心・安全な保育環境の実現を目指すことが大切です。
ライター:加野彩乃
保育士・放課後児童支援員。保育園・学童クラブの現場や、習い事教室事務の経験を経て、現在はWebライターとして活動中。これまでの経験や2児の母としての視点を織り交ぜながら、分かりやすい記事を執筆することを心がけています。
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