目次
はじめに・登壇者紹介
はじめに
2025年7月15日(火)、VISH株式会社はリンクエイジ株式会社と合同で、幼児教育・保育業界のリーダー向けオンラインイベント「ホンマなんコミュニティVol.6」を開催しました。
「あの先輩みたいになるのは、私にはとても…」
「ミドルリーダーって、いったい何をする人なんですか?どうやったらなれるんですか?」
「園長先生たちは、どういう基準でリーダーを選んでいるんだろう…?」
あなたの園でも、こんな声が聞こえてきませんか?
多くの園で当たり前のように使われている「ミドルリーダー」という言葉。でも、その役割や育て方について、みんなでじっくり話す機会は意外と少ないのかもしれません。
「ホンマなんコミュニティ」は、そんな全国の先生方が抱えるモヤモヤを、楽屋話のようにリラックスした雰囲気で語り合うための「井戸端会議」。今回は「ミドルリーダーの任命と育成」をテーマに、3人の園長先生と2名の企業リーダーが、それぞれの悩みや実践を惜しみなく語り合いました。
90分の議論で見えてきたのは、たった一つの「正解」ではありませんでした。大切なのは、本に書いてあるような立派な理論よりも、自分たちの園に合ったミドルリーダー像を、みんなで対話しながら見つけていくこと。このレポートが、あなたの園で新しい対話が生まれる、そんなきっかけになれば嬉しいです。
<執筆・編集:VISH株式会社 西尾 真吾>
登壇者紹介
亀山 秀郎(認定こども園 七松幼稚園 理事長・園長)
阿部 能光(認定こども園 いぶき幼稚園 園長)
北島 孝通(幼保連携認定こども園 庄内こどもの杜幼稚園 理事長・園長)
藤田 俊(リンクエイジ株式会社 代表取締役)
西尾 真吾(VISH株式会社 執行役員)
話題提供:そもそも、なんで今「ミドルリーダー」が必要なの?(VISH株式会社 西尾 真吾氏)
いつもは幼児教育・保育の先生方をゲストにお招きするこのコミュニティですが、今回はメンバーの一人であるVISH株式会社の西尾氏が話題提供。
「園支援システム+バスキャッチ」という幼稚園・保育園の業務効率化を支援する会社のリーダーですが、「組織の悩みは、企業も園も同じなんです」と、素直な胸の内から話を切り出しました。
西尾氏の会社も、かつては社長の目が隅々まで届き、その言葉がみんなに浸透する組織でした。ですが、組織が少しずつ大きくなってくると、園長先生が園の隅々まで見れなくなるのと同じように、だんだんとトップの想いが現場に届きにくくなっていったと感じています。これまでの、一人ひとりの頑張りに頼るやり方から、チーム全体の力を引き出すやり方へと変えていく必要に迫られていました。
トップと現場の間に、いつの間にか見えない溝ができてしまう…。その溝を埋め、トップの想いを現場の言葉に「翻訳」し、現場のリアルな声をトップに届ける「翻訳者」。それが、今まさに求められているミドルリーダーの役割ではないかと、西尾氏は問いかけます。

最近の調査によると、責任が重くなるなどの理由から、「管理職になりたい」と考える若い世代は、男性でも2割しかいないというデータがあるそうです。トップが「なってほしい」と願う一方で、現場は「割に合わないなぁ」と感じているかもしれない。このギャップにドキッとした方も多いのではないでしょうか。
「そもそもミドルリーダーって何する人なんだろう?」
「貴園では、どのような人をミドルリーダーに任命していますか?」
「任命して、そもそもミドルリーダーに何を任せるんですか?」
「抜擢人事のバランスについてどう考えていますか?」。
西尾氏のストレートな問いかけから、3人の園長先生へとバトンが渡されました。

ディスカッション①:うちの園では、こう決めています!三者三様の「任命」ストーリー
最初のテーマは、ミドルリーダーの「任命基準」。三者三様の哲学が見えてきました。
いぶき幼稚園の阿部先生は、「ミドルリーダーってやっぱり一人でもないし、独りで責任を負うような仕事でもないんです」と、優しく切り出します。その役割は、園内の様々なヒト・モノ・コトをつなぎ、チームとして機能するための「つなぎ役」、まさに縁の下の力持ち。

だからこそ、「長く勤めているから、という理由だけで任命するのは、本人にとってもチームにとっても悲劇を生む可能性がある」と語ります。経験年数よりも「リーダーとしての適性」を何よりも大切にしており、その適性を見るために、園内研修や学年リーダーを一度任せてみる「お試し期間」を設けているそうです。保育のスキルだけでなく、「後輩の成長を自分のことのように喜べるか」といった人間性の部分をじっくりと見守ります。そして、もしリーダーが向いていないと感じた場合は、「現場スペシャリスト」として保育の道を究めるキャリアも用意されており、一人ひとりが自分らしく輝ける場所を大切にしていることが伝わりました。

七松幼稚園の亀山先生の園は、教職員が100名を超える大きな法人。ここでは、5年以上の経験が一つの目安ですが、ただ長くいるだけではリーダーにはなれません。学会などで「全国に向けた発表実績」を積むなど、保育実践が優秀であることも一つの指標です。また、いきなり大きな責任を任せるのではなく、まずは「副リーダー」として先輩の元で学ぶ期間があるのも特徴。先輩の背中を見ながらリーダーシップを学び、少しずつ成長していく、人を大切に育てる仕組みが印象的でした。

庄内こどもの杜幼稚園の北島先生は、「そもそも、皆さんが話している“ミドルリーダー”って、同じ役割をイメージしていますか?」と、私たちにハッとするような問いを投げかけてくれました。だからこそ、まずトップ自身が「うちの園のミドルリーダーには、何を任せたいのか」をはっきりと言葉にすることがすべての始まりだと言います。その上で、職員たちと対話を重ねて作ったオリジナルの「キャリアパス表」をもとに、日々の仕事ぶりや問題が起きた時の行動など、毎日の積み重ねを見て次のリーダーを決めていくそうです。ポジションが空いたから誰かを選ぶ、という考え方ではない、というお話にもドキッとさせられました。

ディスカッション②:任せた後、どうしてる?「権限」と「サポート」のリアル
リーダーを決めたら、それで終わりではありません。任せた後の関わり方にも、それぞれの園の深い愛情が感じられました。
ミドルリーダーが一番苦しいのは、きっと「板挟み」になること。
いぶき幼稚園の阿部先生は、「リーダーシップ」と「ミドル・マネジメント」の違いをわかりやすく解説した上で、日常の保育を管理する「ミドル・マネジメント」はミドルリーダーに任せますが、保護者からの大きなクレームなど、イレギュラーな対応は園長たちが矢面に立ちます。ミドルリーダーを孤独にさせない、という強い意志を感じました。

庄内こどもの杜幼稚園の北島先生は、「『これを任せない』って決めるより、トップリーダーがやる事とやらない事をちゃんと明確化していったらいい」、「任せるなら、本当に任せないとダメ」と言い切ります。一度任せると決めたら、途中で口出しはしない。その代わり、何かあった時の責任は、そのミドルリーダーを任命した自分が取る。その覚悟が、ミドルリーダーの主体性を育てます。

七松幼稚園の亀山先生も、給与査定など経営に関わることは線引きをし、「任せる」ことを徹底しています。また、園長の抽象的な想いを、現場がわかる具体的な実践や言葉に「翻訳」することがミドルリーダーの大切な仕事だと語りました。トップと現場、両方の気持ちがわかるからこそできる、重要な役割ですね。

三者三様でありながら、「権限の線引きを明確にし、任せ切り、必要な局面では背中を支える」という共通点が見えてきました。
ディスカッション③:「なんであの人が?」を生まないために。チームの納得感の作り方
若手を抜擢した時など、チーム内に不協和音が生まれることもあります。そんな時、どうすればみんなが納得して前に進めるのでしょうか。
庄内こどもの杜幼稚園の北島先生の園では、年に一度、園長先生自らが全職員の前で、一人ひとりへの期待を語る時間があるそうです。なぜあなたをこの役職にしたのか、あなたに何を期待しているのか。トップが心を込めて言葉を尽くす。その正直な姿が、職員みんなの心を一つにします。

いぶき幼稚園の阿部先生は、“初めてのミドルリーダー”が安心してスタートを切れるように、そっと配慮をします。チーム全体のやる気を下げてしまうような職員(Bad Apple)がいる場合は、その人を新しいリーダーのチームから意図的に外してあげるのです。まずは成功体験を積ませてあげたい、という親心のような優しさを感じました。

七松幼稚園の亀山先生は、特別なことよりも、毎日のコミュニケーションこそがチームの“納得感”を作る一番の近道だと考えています。学年ごと、分野ごとに集まって話す時間を大切にすることで、自然とお互いへの理解が深まり、チームの結束力が高まっていくのです。

総括
リンクエイジ株式会社 藤田 俊 氏
あっという間の90分。最後に、司会の藤田氏がこの日の議論を温かく締めくくりました。
「人が集まれば、思っていることが違って当たり前。だからこそ、目指す方向を示すことが大切になる」。
三者三様の取り組みの中にあった共通項は、ミドルリーダーという存在に「唯一の正解」はなく、それぞれの園が対話を通じて自分たちなりの答えを見つけていく必要があるということでした。そして、このテーマの本質を次のようにまとめました。
「任命することは信頼の証、育成することは関係性の構築です」

執筆者・西尾のまとめ
私の個人的な悩みから始まった会でしたが、3人の園長先生が語ってくださる一つひとつの言葉が、凝り固まっていた私の頭と心を、優しくほぐしてくれるようでした。
たくさんの教科書やセミナーよりも、ずっと心に沁みた90分。園の規模も文化も違う先生方のお話から見えてきたのは、決して難しい理論ではなく、明日からでも始められる、三つの大切なことでした。
それはまず、トップ自身が「うちの園のリーダーには、こんな人になってほしい」という願いを、ちゃんと言葉にしてあげること 。そして、「ここまではあなたに任せるね」と信じて手放す勇気と、「大変な時は私が盾になるから大丈夫だよ」と伝える覚悟を持つこと 。そして何より、「あなたならできると信じているから、お願いするんだよ」という期待を、本人とチームみんなに、自分の言葉で伝え続けること。
どれも少しの手間と勇気がいることかもしれません。でも、その一つひとつの丁寧な関わりこそが、ミドルリーダーを苦しい「板挟み」から、園と職員をつなぐ大切な「橋渡し役」へと変えていくのだと、胸が熱くなりました。
私たちはこれまで、「ミドルリーダー」という便利な言葉に甘えて、その役割や期待を伝える大切な手間を、惜しんでいたのかもしれません。
ミドルリーダーを育てることは、単なる仕事の割り振りではないんですね。職員一人ひとりの可能性を信じ、チームで支え、共に関係を築きながら組織全体で成長していく、まさに「信頼と関係性」を育む営みそのものなのだと心から気づかされました。いつも一緒に悩み、笑い合ってくださるコミュニティメンバーの先生方、そして全国からご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。
とはいえ、また現場に戻れば悩みは尽きません。Vol.7も、そう遠くない日に開催したいと思っています。またの告知を、楽しみにお待ちください!
参加者の声
イベント後、参加者の皆様からたくさんの温かいお声をいただきました。その一部をご紹介します。
・多様な事例への感謝:
「ミドルリーダーに求めるものは園によって違うと知り、はっとしました」「各園の園長先生が具体的な悩みや体験を話してくださり、大変勉強になりました」など、三者三様のリアルな事例が、ご自身の園を見つめ直すきっかけになったというご意見を多くいただきました。
・「言語化」の大切さへの気づき:
「『こう考える』とはっきり話してくださったことで、すっきりしました」「役割に対して、しっかりと『これを望んでいます』と伝えることが必要だと感じました」など、ミドルリーダーの役割や期待を明確に言葉にすることの重要性を再確認したという声も多数寄せられました。
・オープンな場への共感:
「共通の難しい課題を、経験豊富な先生方がオープンに話してくださることで、悩んでいる方の支えになっていると感じました」といった、コミュニティのあり方そのものへの温かいお言葉も頂戴しました。
皆様からいただいた声は、コミュニティメンバー一同、大変励みになりました。心より感謝申し上げます。
主催会社
VISH株式会社について
VISH株式会社は「すべての人にゆとりと笑顔を」を使命に、保育士の負担軽減と保護者が安心できる環境づくりを目指して活動しています。現場の声に耳を傾けながら、ICTを通じて保育の未来を支えています。2010年12月にリリースされた「園支援システム+バスキャッチ」は、幼稚園・保育園・認定こども園向けのICTシステムで、2025年9月1日時点で、全国2,800以上の施設で利用されています(解約・閉園除く)。欠席連絡、保育料計算、連絡帳管理など幅広い業務を効率化し、保育士、保護者、子どもたちが安心して過ごせる環境をサポートします。
VISH株式会社 https://www.vish.co.jp/
「園支援システム+バスキャッチ」 https://www.buscatch.com/kindergarten/
リンクエイジ株式会社について
リンクエイジ株式会社は、インターネット写真サービス「memoridge」を運営しています。教育機関を中心にスポーツ団体や、さまざまなイベントの写真や動画撮影、インターネット上での販売を行うサービスです。現在は延べ全国1,700団体以上の導入実績があります。2021年10月には新サービス「memoridge drive(メモリッジドライブ)」を開始いたしました。「全ての愛を力に変える」をミッションに写真1枚から、愛情を増幅させ、世の中に変わらない愛の循環を生んでいきたい。そして、その愛はきっと明日を生きる力に変わる。そんな愛ある会社を目指しております。
リンクエイジ株式会社 https://www.lage.co.jp/
メモリッジ(事例多数記載) https://memoridge.lage.co.jp/
メモリッジドライブ(先生向け写真管理システム) https://drive.memoridge.com/lp
memoridgeAD(園児募集特化型WEB広告)https://www.lage.co.jp/service/ad/

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